クリーンルームの基本的な概念とその役割
クリーンルームとは
「クリーンルーム」とは、空気中のゴミやホコリ、浮遊微生物などの混入(コンタミネーション)を防ぐために一定の清浄度レベルになるように管理された気密を保った部屋です。クリーンルームでは必要に応じて、温度、湿度、圧力、微量ガス成分、静電気、微振動、電磁波などの環境条件も管理され、その高い制御性が必要とされる様々な業界で利用されています。
クリーンルームの構造
クリーンルームの構成要素:FFUと給排気システムについて
クリーンルームの一般的な構造は、高性能エアフィルタ(HEPAフィルタ、ULPAフィルタなど)とファンが一体化したFFU(ファンフィルターユニット)を天井部分に取り付け、気密を保った室内に清浄化された空気を給気することで、コンタミナントの侵入を防ぐ形式です。
加えて、室内の圧力管理のために、床面あるいは床面近くの壁面にダクトなどによる排気経路が設けられ、空気を建屋外に排気したり建屋内で循環させたりする構造をとります。
給排気システムの違いから、クリーンルームは一方向式クリーンルームと非一方向式クリーンルームに分けられます。
一方向流式クリーンルームとは
一方向流式クリーンルームのメリットとデメリット
一方向流式のクリーンルームは、天井全体、壁一面に高性能フィルタを配置し、部屋全体で一定の方向に気流を作り出すことで、コンタミナントを効率的に排出します。
換気回数は200回~300回以上/hを要しますが、その結果としてクラス5以上の高い清浄度が形成できます。
ただし、イニシャルコスト・ランニングコストともに高くなるほか、クリーンゾーンの拡張や移動が困難な点に留意する必要があります。
非一方向流式クリーンルームとは
非一方向流式クリーンルームのメリットとデメリット
非一方向式クリーンルームは、部屋の一部に高性能フィルタを配置し、別の部分に排気口を設けることで、清浄空気を供給しつつ、室内で発生したコンタミナントを希釈して排出します。
その特性から、一方向流式クリーンルームと比べて、初期投資と運用費用を抑えることが可能です。
しかし、清浄度はクラス6~8とやや低くなり、清浄空気の吹き出す部分と吹き出さない部分が混在するため、気流が滞留する部分が生じやすく、気流の渦が発生する可能性があります。気流の渦が発生するとその結果として、製品の汚染リスクが高まるため、気流の滞留には注意が必要です。
クリーンルームの種類と適用分野
インダストリアルクリーンルーム(ICR)とバイオロジカルクリーンルーム(BCR)
JIS Z8122の中で、クリーンルームは大きく「インダストリアルクリーンルーム(ICR)」と「バイオロジカルクリーンルーム(BCR)」の2種類に分けられています。
インダストリアルクリーンルーム(ICR)は工業製品の製造工程で使用され、空気中の浮遊微小粒子を管理するのに対し、バイオロジカルクリーンルーム(BCR)は主にバイオテクノロジーの分野で使用され、空気中の浮遊微生物を管理します。
それぞれの使用分野は様々で、ICRは半導体製造や液晶生産、精密機械などに、BCRは医薬品製造、病院、食品製造、化粧品産業、宇宙産業、バイオテクノロジーや遺伝子研究などに適用されています。
JISでの定義では下記のようになります。
■インダストリアルクリーンルーム(ICR)
工業品の製造工程で用いるクリーンルームであって、主に空気中における浮遊微粒子が管理された空間
主な用途:シリコンウェハー、フォトマスク、半導体(基板工程・組み立て工程)、液晶、ハードディスク、プリント基板、精密機械 及び上記製造工程用装置の部品 等
■バイオロジカルクリーンルーム(BCR)
主としてバイオテクノロジーの分野で用いられるクリーンルームであって、主に空気中における浮遊微生物がかんりされた空間
主な用途:医薬品製造、病院、食品、飲料、化粧品、宇宙産業、バイオテクノロジー、遺伝子研究 等
クリーンルーム運用時の留意点
コンタミネーション防止
クリーンルームの特性として、清浄空気を導入し、外部の空気が流入することを防いでいます。しかし、気密性が高いため、一度持ち込まれたコンタミナントや室内で発生したコンタミナントが外に排出されにくい特徴があります。
そのため、クリーンルーム運用時には、クリーンスーツの着用やエアシャワーの利用により、部屋内にコンタミナントを持ち込むことを防ぐ必要があります。また、作業レイアウトを工夫し、部屋内でコンタミナントが発生しないように注意することが重要となります。
クリーンルーム選定時のポイント
コンタミナントの排出効率に着目してみる
発生したコンタミナントを素早く排出する能力を持つクリーンルームを選ぶことも重要とされています。
この機能は、意図しない汚染を防ぐ上で欠かせない要素となり、クリーンルームの選択に大いに影響します。
ですから、各種のクリーンルームの特性を理解し、自社の要求に最も適したタイプを選択することが、製品の品質を確保し、生産性を向上させる上で必要となります。